1月20日から一週間ほど、中国の北京、上海、広州、瀋陽に行ってきました。
今月末発売の『ザ・リバティ』でリポートが掲載予定ですが、本ブログでも、何回かに分けて、現地の様子などをお伝えしたいと思います。
北京の空気
まず、「中国に行く」と言うと、誰もが「大気汚染がすごいらしいから気を付けて」と言ってくれました。
中には「死に至るレベルと報道されていた」などと脅かす人もいたので、さすがに旅立つ前日、マスクを買いに行きました。
通常のマスクでは太刀打ちできないというので、工事現場用の「防塵マスク」を買いにいきましたが、渋谷ロフトや東急百貨店には売っているわけがありません。諦めました。
さて、到着した北京空港は雪で真っ白。
雪の「お浄め」効果で、あるていど空気は浄化され、「そのままあの世に行ってしまいそう」というレベルではありませんでした。
しかし実際、数日前には死を覚悟するレベルだったのは確からしく、北京のホテルで会った通訳Aさんによると、数日前は視界はほぼゼロ、外出しないよう通達があったということです。北京大学医学部によると、昨年の空気汚染で「8500人が早死にする」というのだから、深刻です。
粉塵まみれの北京
北京環境保護部のHPには、重点都市の空气がどの程度汚染されているか統計に基づく日報が出ており、汚染の主な出所は、車、石炭、工業とありました。
北京市は人口が最近2000万人を超え、車両の保有者は520万台。車の数がとにかく多くて、夕方以降のラッシュは凄まじいばかりです。
タクシーも、誰かが降りたところに、次に乗る人が群がるような状態で、ぜんぜんつかまりません。しかもそのタクシーの車体自体が、粉塵まみれで、車体もドアも泥で汚れています。
驚いたことに、市内を走ると巨大な煙突があちこち立っています。東京では街中に煙突などなかなか見かけません。煙突の近くを通ると目や喉が痛い……。
また氷点下20度以上にもなる寒さの中、いまだに暖房に「石炭」を使っています。瀋陽の教会の脇には、うず高い黒山があって、何かと思ったら暖房用の石炭です。
また中国の火力発電所も石炭をどんどん燃やしています。中国で年間2300万トンも、石炭が使用されているのです。
北京は朝がない
二日目の朝、一緒に行ったI氏の電話で飛び起きました。
何度か起きてはカーテンを開けたままにしていたのですが、「夜中」並みの暗さだったので、まさか待ち合わせの9時だとはとてもじゃないけど思えなかったのです。
日本の冬空は、空が澄んで、日が昇る時は眩しくて目が明けられません。しかし、こうした情景は日本特有のものなのかもしれません。
とにかく北京は、朝日を感じませんでした。
国境を超える大気汚染は、化学兵器の使用と変わらない
帰国後、「北京の大気が日本に流れ込んできた」と話題に上っています。
空気の汚染は、中国の死命を制する問題でもあると同時に、日本を含め他の国にも被害を及ぼし、地球規模の問題ともなっています。
ザ・リバティwebでは、「国境を超える大気汚染は、化学兵器の使用と実質上変わらない」と指摘します。
http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5571
(2013.02.05 中国の大気汚染が日本にも拡大 政府は賠償を要求せよ)
軍事力増強に使われる日本の省エネ技術―――軍民両用
こう考えると、いまの中国が何が何でも手に入れたいものは、環境保全と省エネ技術であることは明らかです。
これまで、日本はODA〔第四次援助〕として、内陸部の柳州、本渓、蘭州、フフホト、包頭、瀋陽の六都市における大気汚染をはじめとする環境事業や、河南省淮河、湖南省湘江流域の水質・環境改善事業を取り上げてきました。
また、2006年10月、第一次安倍内閣の時には、首相訪中以降、閣僚や要人が雪崩を打ったように北京詣でに参じ、その中で、甘利明経済産業大臣(当時)は、日本の省エネ技術提供を約束してきました。まさに中国が喉から手が出るほど欲しがっていたものを差し出してきたのです。
しかし、軍事中心の国・中国では、日本が供与するODAや技術は、「軍民両用」という中国独特のやり方で使われます。「省エネ技術という直接軍事に関係しない領域であっても、必ず軍事力の増強に加担する」ことを忘れてはいけないと、中国軍事の平松茂雄氏が指摘しています。
とにかく、四年ぶりの北京で、日本と中国の「常識」がまったく違うということを痛感しました。
(つづく)