幸福実現党党首 釈量子
◆円安で苦しむ日本
今、日本では、円安による輸入品の高騰もあって物価高が続いています。にもかかわらず給料は上がっていないため、生活が苦しくなっています。
物価高に影響を及ぼす円安について、最近は、「歴史的円安」という言葉も使われています。
円安とは、ドルに対して円の価値が下がるということですが、英語では「weak」(弱い)。人間の身体に例えると、「脈拍が落ちてくる」ように元気がなくなっている状態です。
これまでは、「円高不況」という言葉があり、輸出企業には円安の方が有利だという声も根強くありました。
実際、円安の恩恵を受けてトヨタの2024年3月期連結の営業利益は5兆3千億円を超え、過去最高を更新しました。営業利益が5兆円台になるのは、日本企業初です。
しかしトヨタも含め、製造業の七割が海外に生産拠点を持っています。現地生産したりして、少しでも人件費の安いところに移してきました。
背景にあるのは日本のコスト高です。日本はエネルギーや食料品など、生活に必要な品物の大半を輸入に頼っています。
極端な円安になると、輸入に頼っている化石燃料が高騰し、電気代が恐ろしいほど値上がりします。
「円安」の影響をもろにかぶるのが中小企業です。部品などを作る下請け企業は、海外から材料を輸入して造っているので、円安で材料費が高くなるわけです。
こうしたわけで、中小企業の6割以上が、「円安は自分の会社の利益にとってはマイナス影響です」と回答しており、「円安がプラスになっています」と答えた中小企業はわずか7.7%です。
大企業では賃上げができても、円安で苦しむ中小企業は従業員の賃金を思うようには上げられません。
そのため、物価高を考慮に入れたうえで賃金がどれほど上がったかを示す「実質賃金」は、25カ月連続マイナスです。
定額減税などしても、今年の家計負担は、昨年比10万円あまり増えることが想定されています。
◆円安の原因は?
では円安の原因は何か?以前は、自動車など日本からの輸出が増えれば「円高・ドル安」が進むとされてきました。
教科書的には「ドルが日本国内にどんどん入ってくると円高になる」と言われてきましたが、今は、貿易収支よりも資本取引の影響が遥かに大きくなりました。
1980年の外為法改正で、資本の取引が自由化されて、外貨預金などする人が大幅に増え、金利差の生まれるところに大量の資金が利益を求めて、大きく移動します。
ちなみに、世界の貿易額は、2022年は24.2兆ドル、1日約663億ドル。1ドル150円で換算すると約10兆円です。一方、世界の外国為替市場の取引額は1日あたりの平均が7兆5千億ドル(1,125兆円)。貿易額の100倍をはるかに超えています。
アメリカがインフレ対策として高金利政策を維持しています。その一方で、日本は低金利政策を続けているため、円安が止まらないのだということが言われます。
それなら、日本も金利を上げればいいのですが、それができません。
金利を上げたら、自宅などローンを組むような大きな買い物をする時に負担が増えたりして、経済にもっとブレーキがかかります。
何より、最大の理由は、バラマキや手厚い社会保障によって財政赤字が増えすぎて、金利を上げると、政府の利子の負担が大幅に増えてしまう。つまり、日本政府の借金がもっと膨らんでしまうわけです。
しかし日本は、財政赤字が巨額過ぎ、とても金利を上げられません。
財務省の試算では、長期金利がこれまでの想定より1% 上がった場合、2033年度 の国債の利払い費がさらに8.7兆円増えるとされます。これは2024年度の防衛関係費(約7.9兆円)を上回ります。
その結果、日米の金利差はなかなか縮まらず、円を売ってドルを買う動きはしばらく続くとみられます。
では、現在の円安、物価高の苦境から脱するためにはどうすべきでしょうか。
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